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大人の科学実験村 第5回 糸電話はどこまで聞こえるか?





500m先に到着。糸の先は霧の中

 自らの世界記録を破るのは、自分自身と意気込んだ西脇主任の檄が対岸の湯本村長に飛んだ。その檄も、ま、その…携帯電話使用でしたけど、それには眼をつぶっていただきたい。

 対岸の湯本班は、再びボートを漕ぎ出した。こちらから見て右斜めへと移動する。途中の突き出した崖を越えて更に右に進むと、グッと奥へ切り込んだ入り江の最深部に着く。金子助役がオールを操る。

 時刻は午後4時、辺りは薄闇に包まれ始め、対岸向こうの山の頂にかかっていた霧が降りて来て、湖面を覆い尽くした。移動し始めたときは、LOCOさんの被っているオレンジ色の被り物がこちらからやっと確認できる状態だったが、ああ…とうとうそれも見えなくなってしまった。

 西脇主任が携帯電話で湯本班の入り江接岸を確認する。力一杯引いて糸をピーンと張る。そしたら、糸の長さは500m! と出た。糸は目の前から白い霧の中に溶け込んでしまっている。長谷川母子が声を揃えて蓄音機ホーンに向かって歌い出した。

 「カエルの歌が聞こえてくるよ、ガ、ガ、ガ、ガ、ケロケロケロケロ、グワグワグワアー。聞こえましたかあ?」

 彩音ちゃんの彩なる歌音、さあッ、どうだあ、糸を震わせ500m向こうの湯本村長に届いたか?

 届いたのだ。我々は糸電話通話世界最長記録500mを樹立したのである。しかし、ボート返却が午後5時だったため、目標の1000m達成は時間切れで諦めるしかなかった。

 彩音ちゃんが歌い終わると、今度は対岸の湯本村長が「ゾウさん」を歌い始めた。聞こえる、はっきりと「おーハナがながいのよ」と聞こえたのだ。52歳のおやじ湯本は完全に童心に帰り、歌い続けていた。糸電話は、50年の時空を超えたタイムマシーンだったのかもしれない。

「カエルの歌が~」「聞こえます!聞こえます!
前人未踏の500m大成功だ!
LOCOさんの感想

360mで聞こえた! と喜んでいると、主任から「もっと遠くへ行ってみましょう!」との明るい声が。結構サバイバルだわ⋯と内心怯えつつ、500m地点へ。足元がくずれるうと叫びながら上陸。こんな大掛かりな実験⋯。ダムの上でコップ人間になる⋯。どちらも、気合いと根性のいる遊び心! でも、そんな時間の過ごし方、いいです。急ぎ足で通り過ぎる毎日より、寄り道をしながら家に帰る。宝箱には、そんな自分の発見がたくさんつまっていると思うのです。今回の実験で、久しぶりに宝箱を開けたLOCOでした♪


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