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大人の科学実験村 第5回 糸電話はどこまで聞こえるか?

湖の対岸までボートで糸を張れ! 津久井湖マップ:長く重い糸が垂れてもいいように、糸を高い崖から、低い対岸に張る計画が立てられた。
10.湖での実験開始! 糸の端が結ばれたペットボトルで作った浮きを湖面に投げる。

小雨降る中、糸の端を持って出航!
11.ボートで浮きを探し、糸の端を確保する。12.糸の端を持ち、対岸を目指す。このPEの釣り糸は、10mごとに色がちがって、さらに1m・5mごとにマーキングされているので、距離まで計れるのだ。

湖を越えて通話できるか?

 湯本村長が、目印用蛍光塗料を入れたペットボトルを崖の上から湖に投げ込んだ。ペットボトルには釣り糸が結ばれている。手漕ぎボートを出し、それを拾う。乗り手は湯本村長、LOCOさん、漕ぎ手が金子助役。こちら側の崖上に残ったのは、長谷川さん母子と西脇主任。ボートが目指したのは真っ直ぐ正面の対岸で、着岸してから糸の長さで距離を計ることにした。それが300m以下だったら、どーすんの? であるが、結果オーライを期待しつつボートが湖面を進んで行く。しかし金子助役のオール扱いは、「任せなさい」の言葉とは裏腹にひどく頼りなく、終始右に左に蛇行し、やっと十数分後に対岸に到着のトホホ状態だった。

 難題は、糸を湖面に接触させず両岸からピーンと張れるかどうかである。細い鉄パイプに糸を結び、合図を確認してから思い切り引いてみた。そうすると、引っ張り強度が抜群な上に軽いポリの釣り糸はさすがである。湖面に触れることなく糸がピーンと張ったのだ。その距離360m!

 しかし、いわば360mの綱引き状態で、かなりのテンションがかかる。互いが針にかかったカジキマグロと格闘しているような状況だった。無風だったことも大きく幸いしたと思われる。ボートを何艘も出して、糸を空中に支える中継点を設置しなければならないだろうと予測していたのだが、それも必要なかったのだ。

 今回の実験村、どういうわけか珍しく快調である。接岸した直後、岩から滑り落ちそうになった湯本村長が、なんとか態勢を回復して、いよいよ第一声を発する。こちら側ではホーンを耳に当てた長谷川さんが、じっと息を飲む。空は曇天、周囲は静まり返っている。と、長谷川さんが呟いた。

 「あ、聞こえます。『本日は晴天なり、でも本当は晴天じゃないけれど』、そう言ってます。ほら、彩音も聞いてごらん」

 実験村幹部会が勝手に公認していた糸電話最長通話日本記録は300mだったのだ。それを一発で我々が破った。その距離360m。「今、なんて言いましたか?」を、対岸の湯本村長に携帯電話で確認した事実が、なんだかなあ…という気はしたが、日本…いや、世界記録樹立である。我々は水泳平泳ぎの北島選手に肩を並べたといっても過言ではない!

今回の糸電話の作り方

糸は長くのばすと重くなることが予想されるので、糸の両端を、棒やリールで強く張り、送受話機のホーンを途中から引き出す方法で実験した。また、棒には糸を直接つながず、空缶の底につなげて振動の減衰をおさえる工夫をした。

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