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Gakken PRESENTS 大人の科学:製品版

電子キットシリーズ

学研電子ブロック入門セット ガイドブック付

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開発秘話~開発者のこぼれ話~

湯本 博文氏

湯本 博文

科学ソフト開発編集部 企画開発室室長
大人の科学総合プロデューサー
学研 科学創造研究所所長

1977年学研入社。「科学」の編集長として画期的な付録を作り続け、今や「学研のエジソン」と呼ばれる。テレビ出演多数。1999年より現職。

金子 茂氏

金子 茂

科学学習編集部
企画開発室
大人の科学編集長

1982年学研入社。「科学」「学習」編集長として数々の付録開発に当たり、数多くのヒット企画を生む。2000年より現職。

当時の完動品が見つからない

「復刻の経緯を教えてください 」

湯本:おかげさまで、2001年の夏に「エジソン式コップ蓄音機」をはじめとして、大人の科学シリーズがずいぶん売れまして、その時買っていただいたお客様からいただいた声に、復刻を望む声がずいぶん多かったんですよ。

金子:もともと、学研電子ブロックのようなものを大人の科学シリーズの中で作ろうという企画はあったんです。それまでの大人の科学のテイストを持った、木製の電子ブロックのようなものも企画にあがっていたんですよ。

湯本:ところが、ユーザーの声は圧倒的に過去の製品の復刻版だったんですね。大人の科学シリーズの中心ユーザーが、どんぴしゃり、かつての学研電子ブロックのユーザーと重なっていたんですね。

金子:かつてのEX-150の発売が1976年でしたから、この頃小学校高学年~中学校くらいの子供たちが、ちょうど今30代の後半くらいの年代なんですね。

「で、すんなり復刻が決まったわけですね」

金子:そうなんです。実は、今大人の科学の営業を担当している部署に、昔学研の公式ホームページをやっていた者がいましてね、公開当時、学研の公式メールアドレスにずいぶん学研電子ブロックの問合わせがきたというような話もありまして、とんとん拍子に復刻版の発売が決まりました。

「復刻版を作るに当たって最初のハードルは何だったんですか?」

湯本:まず当時の現物を手に入れなければ始まらないということで、社内を探したんですが、なんと社内で完動品が見つからなかったんですよ。あるにはあったんですが、一部ブロックが破損していたり、マニュアルが無かったり・・・。

金子:そこで、恥ずかしながら某ネットオークションで出品されていたものを入札してゲットしました。

▲中国の工場でブロックの一つ一つが製作されている

「金型とかは残っていたんですか?」

湯本:これが残っていたんですよ。ところが、調べてみたらさすがに古すぎて使えない。

金子:そこで、結局金型もイチから作り直さざるを得ない状況になりました。

「今回の9800円(税抜)という価格についてですが…」

金子:今回復刻のきっかけになった大人の科学ユーザーの皆さんからの声に、「当時高嶺の花だった商品でも大人になった今なら買える」という意味のものがすごく多かったんですね。なにせ、EX-150は、1976年の発売当時は13000円というものすごい価格だったんです。

湯本:子供のおもちゃの値段としては破格ですよね。私も、当時学研電子ブロックが売られていたデパートのおもちゃ売場の光景を記憶していますが、必ずショーケースに入って展示されてましたからね。隣はたいていトランシーバーとか、メルクリン等の鉄道模型というのが多かったです。それほど高価なものだったんですよね。

金子:ただ、今回は、なるべく多くの人に買っていただきたいという願いもあって、何とか1万円を切る価格で発売するというのが、最初からの目標でした。金型から作るということになると結局新製品を作るのと全く同じなのですが、何とか1万円を切りたい。

湯本:国内で見積もりを取ったところ、どうしても2万円前後の価格になってしまうんですね。そこで、大人の科学シリーズとしてははじめて中国生産に踏み切りました。

金子:本体、ブロック、パッケージ、説明書。原稿を除き、すべてを一括して中国で生産することで大幅なコスト減がはかれ、1万円が射程圏に入ったわけなんです。Made in Japanにこだわってほしかったという声もいただきましたが、やはり2万円を超えると、おとうさんの小遣いで買うにはちょっとつらいですよね(笑)。

「これで一件落着ですか?」

金子:いやいや、じつは本当の苦労はここが始まりでした。復刻版だから、マニュアルも当時のものだし、楽だなと思っていたんですが、大間違いでした。

湯本:2001年の11月には、中国より、最初の試作品があがってきたんです。できばえはなかなかでした。見た目はほぼ同じです。大きな違いは本体裏の電池ボックスの位置と形状なんですが、当時のものより使いやすくなっています。その時すでにパッケージや説明書の複写を終え、最初の原稿はできあがっていたんです。明らかな誤植は直して、どうしてもはずせない説明は入れたりという変更は行いましたが、基本的に当時のものの復刻版の解説書です。後は試作品で実際にブロックを並べ、動作確認をするだけということになって、原稿にそってひとつひとつ150の実験をしていったところ、どうしても動作しない実験があるんですよ。

「何が原因だったんですか?」

湯本:一番問題だったのは、トランジスタですね。

金子:問題となったのはSTR-EとSTR-Cの2種類のトランジスタでした。特にSTR-Eは2SC372Y相当品ということで、現在372は手に入りません。やむなく1815を使用することになりました。トランジスタは、当時もランクによる差があったようですが、今回も考えていた以上にランクによる差が激しくて、物によって同じ実験でもできたりできなかったりという状態が頻発したんです。そこでランクのちがう1815を取り寄せ、150の実験ごとに動作確認をするという日々が続きました。

湯本:CdSにも悩まされましたね。

金子:そうなんです。一番最後のナンバー150の実験に脈拍計というのがありました。CdSの部分に指を置くと脈拍に合わせてメーターの針がふれる、という実験なんですが、すこし暗めのところではまったく針が動かないんです。

湯本:結局このCdSは、ランクの違うものを使って、さらに回路も変更ということになりました。

金子:実験そのものは変えたくなかったので、同じ結果がでるように回路、つまりブロックの並べ方を変更することでなんとかクリアできるよう試行錯誤したんです。結局すべての部品のランクが決定して、回路がフィックスしたのは2001年の12月29日の深夜というありさまでした。

湯本:もし、昔のものをお持ちの方はどこがどう変わったのか、調べてみるのも楽しいかもしれません。こういうわけで結構回路が変わってます。

金子:実は、昔のものを持っている方から「新しいブロックだけ売ってくれ」というお問い合わせが結構あるんですが、そんなわけで、古い学研電子ブロックのブロックと復刻版のブロックを混ぜて使うと動作に問題が出るケースがありえます。なので、こういうお申し出は残念ながらお断りしております。

「回路以外には変わったところはないんですか?」

湯本:先ほどの電池ボックスの他、今回のものはスピーカー部分が取り外せなくなっているとか、いくつか変更点があります。あと、当時はついてないものがついていたりします。

金子:エナメル線なんです。これは、ラジオのアンテナ用に15メートルのものがついています。当時のものは、「自分でアンテナをつけましょう」ということになっていたんですが、こういう時代ですから、エナメル線なんてあまりそこらで売ってないですよね。なので、最初からつけることにしました。ついでに皮膜をけずる紙やすりもセットで入れてあります。

湯本:そのほかにも、マイクロホンとか、イヤホンとか、やはり当時のものと完全に同じものが手に入らずに相当品を使ったものがいろいろあります。

「中国にも行かれたそうですね」

湯本:はい。2002年の正月明け早々に、中国の工場にチェックに行ってきました。最近中国の製造業についての話を聞く機会が多いのですが、実際に足を運ぶと、本当に近代的な工場で驚きました。

金子:中国現地での品質チェックをパスして、これで最終的に量産がGOになりました。このタイミングで、ようやく発売日のアナウンスができたんですね。

▲中国の工場。視察の模様

「発売後の反響はどうですか?」

湯本:いや、うれしい悲鳴で、追加注文が殺到して、発売直後には完全に在庫が底をついてしまいました。増産が間に合わない状態になってます。

金子:問合わせもかなり入りまして、対応に追われました。

「お勧めの実験とかはありますか? 」

湯本:当時一番人気があったのが、「うそ発見機」なんですね。好きな子の名前を言わせてもりあがるといった使い方をされていたようですね(笑)。当時の担当者に聞いたところ、デパートでの実演販売でも、やはり「うそ発見機」をやってみせて、子供たちの興味を引くのがパターンだったそうです。今回、トランジスタの仕様を変えたことで、配線が変わりましたが、その分感度も良くなっていると思います。手に入れたら、ぜひやってみてください。

金子:実は今回、現物を手に入れたとき、一番最初に興味をひかれた実験が「電子すいみん機」という実験なんです。当時、雑誌のウラなどで「睡眠学習機」というのが通販されていましたよね、これに何かテイストが似ているようで、密かに期待していたんです。電子の力でねむれるなんて一体どんな実験なんだ!科学教材の開発者としては興味をそそられずにはいられませんよね。早速試してみたんですが、「う~ん、これを『すいみん機』というか・・」というのが感想です。当時の担当者のネーミングセンスに脱帽しました。あとは皆さまのご判断に委ねたいと思います(笑)。

湯本:最初はお父さんが自分のために購入されるケースが多いと思いますが、ぜひお子さんと一緒に遊んでみてください。何もかもブラックボックスになってしまって、しかも何でもデジタルになってしまった今だからこそ、こういうベーシックなアナログ回路の体験を子供たちにしてもらいたいと思います。

金子:この商品をきっかけにして、オヤジがちょっと見直されたとか、子供と対話の機会がもてたという反応もたくさんいただいています。こんな活用をしてもらえると本当にうれしいですね。

「ありがとうございました」

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