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第9回 世界初の航行へ「高温超電導ヤマト2」、発進せよ!

超電導コイルに磁場が発生!
水上を進んだのは回転寿司!?

 セラミック系超電導コイルを入れたステンレス容器を船の本体にセット。その間に水流を起こす推進装置を設置して固定と、岩田先生の設計図の通りに作業を進め、船自体は短時間で完成した。

 が、しかし。西脇の作成した電池ボックスのスイッチをONにしてもコイルに電流が流れず、磁場が発生しない。

 「電池ボックスの抵抗が大き過ぎ、電線も細いね。これでは微量の電気しか流せない」

と、岡崎氏。そして「私がやりましょう」と、電池と接触面のハンダ付けを始めた。数分後、改善された電池ボックスのスイッチON。今度はしっかりと磁場が発生した。

7 超電導コイルに電流を流す。磁場が発生するはずが…。
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7.超電導コイルを入れたステンレス容器に液体窒素を注ぎ込む。8.スイッチオン!超電導コイルのあたりに金属を近付けて磁気を確認するが、なぜか磁場が発生しない。9.慣れた手付きではんだごてを操り、配線を直していく岡崎氏。

 それから、西脇主導で船の水流を確かめるため超電導回転寿司実験開始。準備していたプールに船を沈め、西脇がスイッチを押すと、ああ、そしたらどうだ。ヤマト2の船尾ダクトから水流が発生し始め、浮かせてあった寿司皿がゆっくりと動き出したのである。

 金子助役、腰を抜かした。世界最先端の超電導技術を使用し、ここまでバカバカしい実験をやったのは西脇が世界初であろう⋯と。

 岩田先生と岡崎氏がマグロの赤身に箸を伸ばす。自分とは脳ミソ構造が格段上の二人が子どものように面白がっている姿を見つつ金子助役、体温が低下していくのを感じた。もしかしたら、高温超電導と電磁推進を合体させた超省エネによるビジネスの新しい世界を、今、目の前で主任の西脇がやって見せたのではないか⋯と思ったからだ。

 一点深く集中のエンジニアと広く浅くの編集者の知力が合体したときに、爆発的なヒット商品が産声をあげる。西脇はひょっとすると⋯と呟きながら金子助役が海苔巻き卵を箸でつかみ、口に入れようとした時、西脇が言った。

 「その卵には、塩素を含んだ海水がついたので食べないように!」

口を開いたまま固まった金子であった。

さあ、プールに入れて水流をチェックだ!
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10.子ども用のプールといってもかなりの大きさがある。バケツで海水を汲み入れること約1時間…。 11.船を海に浮かべる前に、プールに入れて固定して、水流が発生するかじっくり確認する。 12.海水に電流を流すと水素と塩素が発生する。後ろへ押し出されているのは水素の泡。塩素はすぐ水に溶けてしまう。
昼食は水流を利用した高温超電導回転寿司!世界初のお味は?導
船の推進装置が作り出す水流で動く回転寿司。
超電導でエネルギー革命が起こる!?
住友電工の超電導送電線がアメリカで実用化へ

現在の送電線は、例えば100km遠方へ電流を流すと数%は熱エネルギーとなって失われている。そこで、超電導の線材は、抵抗がないので、電気を消費することなく遠くまで送ることができる送電線として期待されている。

2006年にはニューヨーク州オルバニー市、メナンズの変電所からリバーサイドの変電所までの区間の途中350mを、住友電工の開発した高温超電導ケーブルがつなごうとしている。将来性を考えてあえてジョイントも組み込まれている。

近未来にはこの超電導ケーブルが世界の発電所をつなぐようになるだろう。天候に左右される太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーなどがこの超電導ケーブルでつながれば、発電量の多い地域と少ない地域の電力を平準化し、より安定した電力供給源になると考えられている。

高温超電導ケーブル高温超電導ケーブル
写真提供:住友電気工業株式会社

ケーブルの中に液体窒素を通して電線となる超電導線材を超電導状態にしている。

電力供給だけでなく、超電導は乗り物や医療機器、コンピュータなど、電気エネルギーを使っているすべてのものをより無駄なく高速にしていくだろう。

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