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ふろく電ブロminiのできるまで

3. 幻の「手作りブロック」案

6×6列の構成とすると、ブロックは36個必要になる。すると、大人の科学のふろくとして商品化する際には、このブロックを数百万個生産しなくてはいけない。

ブロックの製造には電子部品そのものの単価のほかに、ブロックひとつひとつに電子部品を組み込む工賃がかかる。ブロックの中に形状の異なる電子部品をおさめるためには、どうしても人の手でハンダ付けをする必要がある。

そこで、ブロックそのものを読者諸兄に作ってもらってはどうかという案が浮上した。大人の科学にはものをつくること自体を楽しむ読者が多いこと、またふろくにない自分の好きな電子部品を入れられるメリットなどから、出てきた案だった。

▲幻の手作りブロック試作品。下がパーツ部分、上がふたの構造になっている。
右の写真は抵抗をつけたもの。

とはいえ、ハンダ付けが必要となると技術に差が出てきてしまうため、人によっては機能するブロックが作れないかもしれない。そこで、ブロックの下3分の1を別パーツにしてリードとなる金属線や電子部品の脚などを巻き付け、残りの上3分の2にあたる部分で上からふたをする方法を考案した。巻き付けた金属線は外側になるので、うまく接触すれば十分機能は果たせる。工場でハンダ付けする必要がなくなるので、コストもかなり下げられる。

実際に試作品を作って編集部で試してみる。ブロックを作る作業自体は簡単で誰にでもできそうだ。36個のブロックを作るには、1時間もあれば十分だった。だが、実際に回路を組んでみると、同じ回路を作っても性能が出ない。問題は接触だった。巻きつけた線の接触では、どうしても不安定になってしまうのだ。

ブロックの接触方法は電子ブロックの永遠の課題で、60年代に作られたSRシリーズでは、ブロックの下側に金属端子を出し、本体の穴に差す方式になっていた。本体側に金属線がはしっており、そこで接触させるのだ。今、電子工作でさかんに用いられるブレッドボードのような構造だった。STシリーズになってから、盛り上がりのある金属片をブロックの外側に出し、そのバネ性を利用して接触させる方法が開発された。ブロックの抜き差しの際にはバネでほどよくテンションがかかり、接触はより確実になった。

しかし、今回の手作りブロックの線による接触では安定した回路が作れない。結局、この起死回生と思われた案は放棄せざるをえなかった。

EXシリーズと同じ方式のブロックを作るしかない。ブロックは5×5列の25個とし、その中で最善の50回路を組むためにソフト面の強化をすることに方針を変更した。

また、さらに細かい部分ひとつひとつを見直した。刻印や印刷だった部分をシールにした。ブロック上面の回路記号を、銀のタンポ印刷から白のシルク印刷に変えた。こういった細かい変更で、よりコストパフォーマンスを上げることに努めた。

しかし、まだ、電子部品そのものに課題は残っていた。

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